1.4.2 地図投影法

地球流体電脳ライブラリでは地図投座標も普通のU座標系の 一つとして扱われる. 地図投影法には実にさまざまな種類があり, すべてを解説するためには1冊の本が必要であるが, ここでは地球流体電脳ライブラリを利用するために知っておくべき基本的事柄 を解説する. なお, 地図学の詳しい解説は 野村 正七 著 「地図投影法」 などを参考にさ れたい (ただし, この本は絶版).

地図投影法は基本的に「球面を何らかの方法で2次元平面に投影する」方法で ある. 実際の地球は完全な球面ではなく回転楕円体に近いので, 厳密な地図投影を行なうためには回転楕円体の表面を平面に投影しなければ ならない. しかし, 本ライブラリでは回転楕円体からの投影ではなく, 球面からの投影のみをサポートする. なお, 投影された図形は投影法によっては3次元的な雰囲気を持つが, 地図投影座標はあくまでも2次元座標であることに注意されたい.

地図投影の多くの図法では幾何学的な方法で球面から平面に投影される. その際の平面の形状によって次のようにいくつかの図法に分類される.

円筒図法 地球儀をこれに接する円筒の中に位置付け, 何らかの方法で経緯線を円筒に投影して, 展開する図法.
円錐図法 地球儀をこれに接する直円錐の中に位置付け, 何らかの方法で経緯線を円錐に投影して, 展開する図法.
方位図法 地球儀上の一点でこれに接する平面を設定し, 何らかの方法で経緯線をこの平面に投影する図法.
便宜図法 上記以外の図法.
これらの円筒や円錐の軸, または方位図法における接点からの垂線が 地球の自転軸と一致するものを正軸法, 直交するものを横軸法, 斜めに交わるものを斜軸法と呼ぶ. 一般に, 円筒図法は全球の表示に向いており, 円錐図法は中緯度の表示に向いている.

地図投影では球面を平面に投影するため, どうしてもひずみが生じてしまう. そこで, 多くの図法では 面積 または 角度 のどちらかが 保存されるように工夫されている. 原理的に, この二つを同時に保存するような投影は不可能である. この様な保存性に関する性質によって次のように分類される.

正積図法 地図上のどこでも面積関係が正しく表現される図法.
正角図法 地図上のどこでも局所的な角度が正しく表現される図法.
正距図法 経線, 緯線または方位線上で, 長さが正しく表現される 図法.

本ライブラリでは以下のような地図投影がサポートされる.



ハンメル図法は地図学上, ランベルト正積方位図法の変種として方位図法に分類されるが, その形状や用途はむしろ円筒図法に近いので, ここでは便宜的に円筒図法に分類する. これらの図法すべてについて, 正軸法, 横軸方, 斜軸法が可能である.

なお, 普通の地図投影法には含まれないが, 正射図法の変形として人工衛星から眺めたような投影法 (Satellite View) もサポートされている. 普通の正射図法は地球儀を無限遠から眺めたような投影になっているが, これを有限の位置から眺めたような投影に変形したものである.